雑記

もうずっと長いこと味のしないガムを噛んでいるみたいだ。相変わらず夜は眠れない。スマホを片手にベッドの中で悶々とする日々を、学生時代からずっと続けてきた。そこには何もない。なぜなら何もしていないからだ。そんな当たり前のことが、当たり前のこととして僕の背中を覆っている。昨日のことだったらなんとか思い出せる。だけど一昨日のことなんてこれっぽっちも覚えていない。

 

僕は酒を飲む。気持ち良くなりたいからだ。昔からずっとそうだった。何もできなかった僕が、何かを成し得るんじゃないかと勘違い出来る唯一の道具が酒だった。今日も酒を飲んだ。昨日も、一昨日も、その前も飲んだ。わずかばかりの自尊心と、憂鬱と、気持ち悪さだけが残った。困ったことに僕はもう一人で酒を飲んでも気持ち良くはならないらしい。

 

僕は横になる。頭の中はぐるぐると回っている。思い出すのはいつだって昔のことだった。昔聴いていた音楽を聴く。今はもう会えない人たちの顔が走馬灯のように駆け巡る。コップに残ったぬるい酒を飲み干して、僕は再び横になる。眠らなきゃいけないんだ。仕事は朝と共にやってくる。僕は目を瞑る。ずっと眠たかったんだ。だけど眠れやしない。

 

眠れ眠れと言い聞かす。僕は何かをしなくちゃいけない。それは分かっている。だけど、何をしなくちゃいけないのかは分からない。余計なことが頭に浮かんですぐ消える。意図しない思考が夜を駆ける。ちっとも眠れやしない。煙草を吸わなくちゃいけない。もう時間は2時を回っている。外は雨が降っている。眠たい。傘はいつの間にかなくなってしまった。僕は外に出る。

 

大学生の頃だった。雨に打たれながら家路についている。途中、誰もいない公園のブランコに乗って煙草を吸おうとした。ライターの火が点かない。雨が降っているからだ。携帯電話を捨てた。僕は21歳だった。

 

上手くいかないことはない。だけど、上手くいっていることも何もない。漠然とした何かが僕の目の前にあった。それは不安だったのかもしれない。或いは未来と呼ぶべきものだったのかもしれない。それはもうずっと長いこと僕のそばにあった。

 

見ないふりをしていた。彼は決まって一人の時にやってきた。僕は逃げるように友人の元へ走った。彼女の元へ逃げたこともある。だけどやっぱり、一番多く逃げたのは酒の中だった。最近、彼はどこにでも現れる。酒を飲むといなくなっていた筈なのに、気が付けば目の前にいる。

 

彼はずっと笑っている。